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国立公園「雲仙」指定90周年記念式典及び講演会の開催

白濵えりか

1934年(昭和9年)、雲仙は天草、霧島、瀬戸内海とともに、日本で最初の国立公園に指定され、今年(2024年)で記念すべき90周年を迎えました。
改めて雲仙の魅力を探り、その価値を再認識し、さらなる観光振興と地域活性化を図るための、記念式典及び講演会が開催されました。当日はあいにくの大雨でしたが、多くの方にご来場いただきました。

国立公園「雲仙」指定90周年記念式典

記念式典には伊藤信太郎環境大臣をはじめ、国や県、島原半島3市の首長ら約200人が参加しました。また、雲仙市は脱炭素化に取り組む国立公園「ゼロカーボンパーク」に九州初の登録をしたと発表しました。金澤秀三郎雲仙市長は「豊かな自然と景観を守りつつ、脱炭素化を推進する」と宣言されました。
ゼロカーボンパークとは、国立公園における電気自動車などの活用、国立公園に立地する利用施設における再生可能エネルギーの活用、地産地消などの取組を進めることで、国立公園の脱炭素化を目指すとともに、脱プラスチックも含めてサステナブルな観光地づくりを実現していくエリアのことです。

国立公園「雲仙」の90周年を祝う記念式典及び講演会では、ブライアン・バークガフニ先生による歴史講演が行われました。この講演は、雲仙が単に観光地というだけでなく、国際文化交流の舞台として、また平和の象徴としての役割を担ってきたことを浮き彫りにしました。雲仙が国立公園として指定されてから90年の歴史の中で、この地は多くの外国人訪問者を惹きつける魅力的な場所となりました。


バークガフニ先生は、当時の訪問者が上海や香港に滞在していた欧米人であり、彼らが避暑地として雲仙を好んだこと、また未開の雲仙温泉街にチェアカゴを使ってアクセスできたことなど、具体的なエピソードを交えて語ってくださいました。また、外国人が雲仙で過ごした時間が、自然や温泉だけでなく、国籍を超えた共存の特別な時であったことを強調しました。太平洋戦争が勃発する前年まで外国人らは雲仙を訪れており、来訪者数も過去最高人数を記録したそうです。

雲仙という地がどれだけ発展していたのか、改めて再認識できるとても貴重な機会となりました!
ブライアンバークガフニ先生について、詳細は下記の記事をご覧ください!

その後のディスカッションでは、雲仙と共に育ち、雲仙を守り続けてきた地元経営者の方々、そして、世代交代し現在の雲仙を担っている方々から、過去、現在、そして未来の雲仙についての熱い想いを語られました。

1部のテーマ「雲仙の90年とこれから」

左から川嶋氏、七條氏、本多氏、福田氏、豊田氏

ファシリテーター
 ∟ 川嶋 直 氏(日本インタープリテーション協会)

登壇者
 ∟ 七條 健 氏(雲仙を美しくする会)
   本多 義彦 氏(雲仙を美しくする会 会長)
   福田 努 氏(福田屋経営者、旅館ホテル組合長)
   豊田 桐子 氏(新湯ホテル)

このディスカッションでは、”継続と革新”というキーワードが出てきました。雲仙が持つ自然と文化の価値を維持しながら、サステナブルな発展を目指すべきであるという共通の見解で結ばれました。地元の歴史や文化を深く理解し、それを活かした新たな観光コンテンツの開発、環境保全と経済発展のバランスを考えた持続可能なモデルの構築が、次の100年に向けてのキーポイントとなるでしょう。

パネルディスカッションの内容

川嶋氏:雲仙の価値について皆さんの意見をお聞きしたいと思います。本多さん、いかがでしょうか?

本多氏:ありがとうございます。雲仙は国立公園として90周年を迎え、地元との連携により、多くの成果を挙げてきました。これからは、開発よりも既存の資源を大切にし、地元の人々と共に景観を守りつつ、必要な場所は革新していくことが大切だと考えています。これらを継続し、100周年を迎えるための再始動を目指したいです。

川嶋氏:継続と革新、重要なポイントですね。福田さん、観光業の視点からはどう思われますか?

福田氏:既存の資源を深堀りすることが重要だと思います。雲仙の歴史や自然は非常に魅力的で、これを活かした観光コンテンツの開発が必要です。特に、サステナブルな観光の実現を目指し、島原半島の独特な地形や食材を生かした経験を提供したいですね。また、雲仙を点ではなく面として捉え、多角的な観光を展開していくことが次の10年のキーポイントになるでしょう。

川嶋氏:歴史や自然の価値を生かした取り組み、とても興味深いですね。豊田さん、海外経験から見た雲仙はどうでしょう?

豊田氏:雲仙温泉街は観光地としての歴史がありますが、個々のニーズが多様化している今、雲仙独自の魅力を生かしたリアルな体験の提供が求められています。サステナブルツーリズムの推進は、観光客だけでなく地域にもメリットをもたらします。ピーク時のばらつきを平準化することで、人手不足の解消にも繋がるでしょう。過去の外国人訪問者に学び、「雲の上の避暑地」としての雲仙をさらに魅力的にしていきたいですね。

川嶋氏:雲仙の新しい魅力の発見と提供、とても重要なポイントです。七條さん、これからの雲仙についてどうお考えですか?

七條氏:80周年を迎えた時に立てた「プラン100」を思い出します。実行に移すことが何よりも重要です。予算がないからといって諦めるわけにはいきません。過去の歴史や習慣を深掘りし、そこから新たな創造を目指す。この主体的な創造と仕組み作りが、次の100周年に向けての大きなステップになります。

川嶋氏:歴史から学び、新たな創造を目指す、素晴らしい考え方ですね。本日のディスカッションを通じて、雲仙の価値をさらに深く理解し、次の100周年に向けて継続と革新を重ねていく重要性を共有できたと思います。

2部のテーマ 「国立公園雲仙の90年を食材・料理を通して振り返る」

左から川嶋氏、荒木氏、草野氏、加藤氏

ファシリテーター
 ∟ 川嶋 直 氏(日本インタープリテーション協会)

登壇者
 ∟荒木 冨子 氏:雲仙温泉街で99年の歴史を持つ荒木精肉店の店主。
          地元の旅館への肉の卸しや焼き肉店の経営を通じて、地元食材の提供に尽力。
  草野 玲 氏:雲仙福田屋の料理長で、自らが育てた野菜を使用し、島原半島の魅力とサステナビリティを伝える。
  加藤 隆太 氏:雲仙の代表的な銘菓「湯せんぺい」を提供する遠江屋本舗の代表取締役。
          製品を通じて、雲仙の火山との関連や食の豊かさを伝えている。

2部のディスカッションでは、島原半島が肉、魚、特に野菜の豊かな生産地であること、また、その地域性を活かした食文化の発展と伝承の重要性が強調されました。全国の料亭で学んだ後、地元の価値に気づいた草野氏、雲仙を盛り上げるために地域の歴史や特性を活かした商品開発に取り組む加藤氏、そして地元の食材を通じて雲仙のブランドを築く荒木氏が、それぞれの経験と取り組みを共有しました。

ファシリテーターの川嶋氏は、雲仙の魅力を伝えるために全ての人が関わるべきであり、これからも雲仙が日本のお手本となるよう期待を寄せました。これからの雲仙で大切になってくることとして、地域の食材の価値を高め、それを伝える人々の役割が強調されました。食を通じた雲仙の価値伝達に対する熱意と、それを支える地域コミュニティの重要性が議論の中心でした。

パネルディスカッションの内容

川嶋氏:さて、食を通じて雲仙の価値をどう伝えていくか、みなさんのお話を伺いたいと思います。草野さんからお願いできますか?

草野氏:はい、ありがとうございます。私が外で修業して一番感じたのは、地元島原半島の食材の素晴らしさです。特に野菜の美味しさは全国でも随一で、これを「島原半島の宝探し」と表現しています。地元の価値を再発見し、お客様に伝えていくことが私たちの使命だと考えています。

川嶋氏:素晴らしい視点ですね。加藤さんはどうお考えですか?

加藤氏:私も草野さんと同じく、地元の食材の豊かさを大切にしています。湯せんぺいを通じて、雲仙の火山の恵みや食の豊かさを伝えてきました。特に、インバウンドのお客様には、雲仙の歴史や文化を伝える重要な役割を果たしています。雲仙をもっと盛り上げるためにも、食を通じた価値伝達は欠かせません。

川嶋氏:地域の食文化を深く理解し、伝えていくことの重要性が感じられますね。荒木さん、精肉店の視点からはいかがでしょう?

荒木氏:私たちは、雲仙のブランド牛など、地元の肉の魅力を伝えることに力を入れています。特に最近は素泊まりのお客様が増えているので、宿泊施設と連携しながら、雲仙の食材を活用した価値創造に取り組んでいます。地元の食を支え、伝えていくことが、私たちの役割だと考えています。

川嶋氏:食を通して雲仙の魅力を伝えるという共通の目的があるようですね。地域の食材を活かした取り組みが、雲仙の価値を高める鍵となりそうです。今後もこのような活動を通じて、雲仙がさらに魅力的な地域として発展していくことを期待しています。本日は、貴重なお話をありがとうございました!

国立公園「雲仙」の指定100周年だけでなく、雲仙を訪れる人にとって、働く人にとって、そして住む人にとって、より魅力的で素敵なまちを目指していきたいと思います!これからの雲仙にも是非ご期待ください!

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