雲仙地獄の活用
中村 星斗
雲仙地獄をめぐりながら聞く四つのおはなし。
夜の雲仙地獄は、自然を知ってもらうナイトツアーが行われているだけでしたが、もっと物語を重視したツアーをつくろうと、2019年の冬から制作が始まりました。
夜の地獄はとても暗く、ちょっと不気味ですが、その雰囲気をそのまま体験していただこうと、提灯を持って歩いていただくことを提案。
第1回目の検討会の時には、この提灯の演出に多くの方からOKをいただきました。
脚本と音の演出。
地獄をめぐりながら4つのお話を語り部の方に語っていただくのですが、この脚本には「赤い花の記憶 天主堂物語」の舞台を担当された「小川内清孝」氏に依頼しました。歴史にも造詣の深い方で、雲仙に伝わる逸話などを深く調べていただきました。
一方、語り部の「伊藤瑞」さんは、大村市で語りの講師を行いながら、FM大村パーソナリティでもご活躍。その独特の言い回しと、顔の表情の素晴らしさから、伊藤さんをメインに地獄めぐりの脚本を作っていただきました。
しかし、一人だけの演出だと寂しい感じが際立ち、「音」を加えていきます。その一つが「三味線」でした。
どこからともなく聞こえてくる三味線の音は、地獄にまつわるキリシタン殉教と複雑な人間模様を増幅させるよい演出となり、加えて、三味線担当の「たなかりほ」さんには、お客さんと絡むシーンも演出としてプラス。
これが、サプライズ的な要素となり、検討委員の皆さまの中でも話題になりました。
四つの物語。
さて、物語の内容に関してですが、いくつか候補を上げつつ、下記に決定しました。いずれも、この場所で起こったことをキチンとお伝えできるよう、できるだけ史実にのっとった脚本を心がけました。
特にキリシタンが殉教した場所であるということは、地元の方々にとっては負の遺産のような受け取られ方もあったようですが、実は、「殉教する」ということは、信徒にとっては幸せなことであったこと。雲仙地獄は処刑場ではない。ここは殉教という、神様に選ばれ天に召された場所であること。そのことをきちんと解説することが必要とされました。
決定した四つの物語は下記の内容となります。
- 壱の巻『雲仙哀歌』(谷真介著『キリシタン伝説百話』より)…潜伏キリシタンの青年と庄屋の美しい娘の悲恋物語。
- 弐の巻『河童の手』…いたずら河童の大将と満明寺の僧赤峰法印が雲仙地獄で対決する物語。
- 参の巻『お糸地獄の由来』…明治初期、島原城下のお糸が略奪愛と殺人の罪を犯した物語。
- 四の巻『清七地獄の由来』…長崎の潜伏キリシタン清七が雲仙地獄で拷問を受け殉教した物語。
最後の締めくくりとなる「清七地獄」においては、「送り三味線」となるよう新たな曲を制作し、音を聞きながら帰っていただく内容になっています。これもいい演出となりました。
「湯にも地獄の物語」。雲仙温泉を支える「湯」にも、これだけ「地獄」の「物語」があるということを知ってもらうことから、このタイトルになったことも付け加えておきます。
キャストも募集中!
制作関係者は以下の通りですが、今後、変わりとなる語り手と三味線奏者が必要です。
ぜひやってみたい!という方がいらっしゃれば、嬉しいです。
- ディレクション:坂井恵子(株式会社スタジオライズ)
- ツアーシナリオ:小川内清孝
- 語り:伊藤瑞
- 三味線:たなかりほ
- ツアーガイド:中村和美