白雲の池の活用
中村 星斗
自然の楽しみ方、雲仙の楽しみ方を考える ~雲仙サンカクマルシェ 2020 ~
雲仙温泉を囲む緑の中に、白雲の池はあります。キャンプ場として親しまれてきたこの場所ですが、人気の低迷で数年前までは草木の生い茂る藪(やぶ)と化していました。
雲仙の若者たち自らこの藪を整備し、2017年に始めた「雲仙サンカクフェスティバル」。
年々来場者を増やし、コロナ禍の2020年11月は「雲仙サンカクマルシェ」と形を変えて開催されました。
かつて外国人に人気の避暑地であった雲仙を再現するような「天幕レストラン」も初開催。好評のうちに幕を閉じました。
雲仙はグランピング発祥の地?
かつて雲仙が一大避暑地としてにぎわったころ、外国人たちがここでゆっくりと食事を楽しみながら、静かな水面に映る木々の緑、鳥のさえずりを楽しんだ写真が残っています。
それはまさに「グランピング」(自然を楽しむ優雅で快適なキャンプ)の楽しみ方。雲仙はグランピング発祥の地といえるのかもしれません。
「この外国人たちの写真が、雲仙の新しい楽しみ方の提案になると思いました」。
そう語るのは他県から移住して15年、雲仙温泉でゲストハウスTSUDOIを営む市来勇人さん。雲仙サンカクマルシェ2020の実行委員長を務めました。
「雲仙の魅力をもっと若い世代にも伝えたいと思った時、旅館で過ごす、地獄を見学する、登山する、の他にも何か新しい切り口が必要だと考えました。
三岳五峰・8つの山々に囲まれた雲仙の自然をもっと身近に楽しめるコンテンツがあれば、と思う中でこの写真に出会ったんです。
自然を感じながら避暑を楽しんだ外国人たちの姿は、現代の私たちの目にとても新しく映りました」。
藪を切り開いて変わったこと
「立ち上がったのは、雲仙青年観光会という若手からなるチーム。雲仙温泉で1963年から続く会です。
2017年の山の日に合わせてフェスをやろうと決めたものの、白雲の池キャンプ場はしばらく使われておらず荒れ地状態。自分たちの手で長い時間をかけて、藪を切り開くところから始めました。
枝払い、草刈りなど整備が進むにつれ日当たりのいい場所となり、希少な植物が増えるという、うれしいごほうびも。全く手をつけないことが、必ずしも自然を守ることではないと学んだ瞬間でした」。
「今ではキャンプ場としての機能を取り戻し、コロナ禍のキャンプブームも相まって人気のスポットとなっています。
設備の充実した場所ではないですが、キャンプが趣味の人たちにとってはそれがかえって魅力的だと好評です」。
これからの課題
「フェスは雲仙の避暑を感じてもらえるよう夏の山の日に合わせて開催してきました。来場者は1年目1,000人、2年目700人、3年目2,000人と増え、新たな雲仙の魅力をお客さんに伝えることができ、町の人たちにも若い世代が頑張ってくれたと評価の声をいただきました」。
「白雲の池とキャンプ場は、近くの温泉を楽しみながらも豊かな自然を堪能できる特別な場所。星空の観察にも絶好のスポットです。
今後もイベントを続けながら、雲仙の魅力をいろんな方面から提案し、幅広い世代に楽しんでもらえたらと思っています」。