住んでよし、働いてよしの商店づくりプロジェクト
中村 星斗
雲仙でしあわせに生きること
「住んでいる人がしあわせでないと、訪れる人は楽しめない」。
雲仙の住民が生き生きと楽しく暮らすことと、訪れた人たちが街を存分に楽しむこと。一見関係ないように見えて密接な関係があるこれらを軸にした、まちづくりをしていこうという取り組みです。
プロジェクトメンバーの観光協会理事 荒木美智子さんに話を聞きました。
生活者視点で見る雲仙のお店
「生活基盤として現在の雲仙には不足しているものがたくさんあります。買い物や保育園、学校など近くにあってほしいものがなく、小浜まで通っているのが現状です。お店にしても住民向けなのか観光客向けなのか、その線引きはあいまいです。
住民向け、観光客向け、どちらかに偏りすぎるとどちらかが不便を感じます。双方にとってどのような店の姿が理想的か、収益が上がるのか、新しい仲間を迎え入れながらお店のあり方を考えたいと思っています」。
「シェアショップ」というチャレンジ
「お店は開けておきたいけれど病院や買い物、美容院にも行く必要がある。小浜まで通うとなると、まとまった時間が必要です。店主は女性や高齢者が多いのが現状。店の終活について悩まれている方も多くいらっしゃいます。
とはいえ今後の考えを調査したところ、時代に合わせていろんな商売に挑戦したいという思いもお持ちでした。そこでシェアショップという企画を考えています」。
「例えば1つの店でオーナーが選ぶ商品と、若者のセレクトした商品を同時に並べる。または昼間はオーナーが営業、夜と週末は若者が営業。ある期間限定で若者が営業を行う。などお店という1つの場を複数人で分けて活用しようというものです。
オーナーの営業に関するものにはオレンジ、若者の営業に関するものにはブルーなどイメージカラーを決めて、お客さんにもわかりやすく伝えようと考えています」。
家族のように支え合って
「店舗を持たないけれど売りたいもの、提供したいサービスがあるという若者にとっては大きなチャンスになりますし、ベテランの先輩のそばで商売の基本を学ぶことができます。
オーナーにとっては通院や子どものお迎えなどの際に店番を交代してもらうことができますし、計画的に休みを取ることができるようになります。
また若い人にインターネットでの告知や販売など、新しい視点を学ぶこともできるかもしれません。閉業を考えた人たちに、店を続けるという選択肢が生まれるのです。
血は繋がっていないけれど助け合える、家族のような関係が作れるんじゃないかなと思います」。
小浜ー雲仙間、もっと気軽な移動手段を
「小浜温泉と協力して、相互の行き来をしやすくするナイトバス、ナイトタクシーの運用に向けて準備を進めています。
雲仙の小中学生は小浜の学校に通っていて、最終のバスに合わせて部活動や習い事を早く切り上げて帰宅しています。
また雲仙にはスナックなどのナイトスポットがないため、希望する観光客は旅館の送迎やタクシーでの移動を行なっています。
泉質の違いを楽しむためや、夏でも涼しい雲仙に涼みがてら、小浜で仕事を終えた後に雲仙の温泉に入りに出掛けるという人たちもいます。
このようなさまざまな理由から、遅い時間帯に気軽に利用できる移動手段が求められているのです」。
これからの動き
「2年前に店主の皆さん向けに行った店舗の終活に関するアンケートを、近日中に再度行う予定です。皆さんの思いを大切にしながら実践を始めて、少しでも雲仙を生き生きと楽しく暮らせる場所にできればと思います」。
予期せぬ新型コロナウイルスの感染拡大で、計画は順調とはいえない状況です。
とはいえ、雲仙温泉の商店主たちにとっては、待った無しの状況。延命措置ではなく、血を入れ替えるくらいの覚悟が求められるところまで来ています。